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2012年10月23日 (火曜日)

前衛芸術家、魏如萱。

魏如萱(ウェイルーシュエン)『沒有星期五的無人島』(2012)

Photo 左手に乗せた物体、何だろう…。

今年の第23屆金曲獎で最優秀国語女性シンガー賞にノミネートされた個性派アーティスト、Waaこと魏如萱(ウェイルーシュエン)の最新シングルです。
リリースは当初、自身の誕生日である10月10日を予定していたようですが、1日ズレ込んで10月11日となっています。 また、2CD+2DVDの4枚組ライブ盤『晚安晚安演唱會』も今回同時リリースしました。

左は1曲目『沒有星期五的無人島』、右は3曲目に収録されている『Je t'aime,moi non plus』のライブ映像。
 
http://youtu.be/RK1iUNUgFSE
http://youtu.be/bCN8FMy0Qjk

全3曲を収録。 トータルプロデュースは、もう彼女の作品には欠かせない存在となった盟友・陳建騏(ジョージ・チェン)です。 タイトルナンバーの『沒有星期五的無人島』は、どうやらロビンソン・クルーソーの物語をモチーフにしているようですね。 従僕・フライデー(星期五)がいない無人島…ということでよいのでしょうか。 ミュージカルの一幕を思わせる…ちょっと物悲しい雰囲気の曲です。 作曲は陳建騏、作詞は黎煥雄(リーファンシォン)とWaaの共作。 黎煥雄は今年7月にWaaの主演で再演されたミュージカル『地下鐵』(2003年初演)のほか、2004年上演の『幸運兒』、2008年の『向左走向右走』など、絵本作家・幾米(ジミー)原作ミュージカル三部作の監督を務めた劇作家です。 陳建騏はこの三部作の音楽を担当しました。

今作で陳建騏が直接参加しているのは1曲のみで、あとの2曲はバンドスタイルのロックナンバーです。 『Je t'aime,moi non plus』は元・阿霈(季欣霈)樂團のギタリスト・韓立康との共作。 アンダーグラウンドに走りそうになるWaaのアルバムに、『麋人』や『三個字』、『飛鳥』といったストレートに聴かせる楽曲を提供しているのが韓立康です。 2曲目『壞掉的戀曲』は半アドリブ的な録り方でもしたのでしょうか…Waa、韓立康(ギター)のほか、張翰中(ピアノ)、黃少雍(ベース)、賴聖文(ドラム)らの名前も作曲者としてクレジットされています。 詞は2曲ともにWaa自身が書いていますが…難しすぎて理解出来ません^^;。

このジャケット写真も難解です。
彼女が左手に乗せている奇妙な形をした半透明の物体(…最初に発表された写真では円柱状だった)、これはいったい何なのでしょう?

亞神唱片はこのCDの紹介文で日本の前衛芸術家・草間彌生さんについて触れています。 視界を覆い尽くさんばかりに描かれた水玉(ドット)模様や男根の形をしたオブジェなど、西洋では彼女の作品を日本のポップカルチャーに結びつけて語ったりもしますが、このスタイルの背景にあるのはそんな可愛らしいものではありません。
草間さんは幼い頃から幻覚や幻聴に悩まされるなど精神的な病を抱えていました。 母親から受けた体罰、軋轢が影響していると言う人もいます。 自分の中にある『強迫観念(obsession)』を解消する過程で生まれたのが、あの連続する網目模様やドットペインティングでした。
そして男根の形をしたオブジェは性に対する『恐怖』の象徴であり、敢えてたくさん並べる(…連続させる)ことでその恐怖を克服しようとした…いわば治癒行為の過程こそが彼女の創作物、様式美の源です。

今回Waaがこのシングルのテーマとしたのは、『obsession』です。
あの左手に乗せた物体は、草間さんのオブジェをモチーフにしたものでしょうか。
だとすれば、はたしてどのような『観念』が彼女の中に存在するのか…
CD紹介文には、『猫嫌い』を克服した…と書いてありますが^^。

ますます前衛的になっていく魏如萱、楽しみでもあり、ちょっと怖くもあります…。

魏如萱 waa wei - Facebook
陳建騏 - Facebook
亞神音樂娛樂 - Website
添翼音樂 TEAM EAR MUSIC - Facebook

* * * * * *

魏如萱(ウェイルーシュエン)、英語名はWaa Wei。 1982年生まれ、台湾東部・花蓮縣の出身です。 オーディション番組『超級星光大道・第2シーズン』(2007年)から誕生したロックシンガー・魏如昀(ウェイルーユエン、1984年生)はWaaの妹です。

彼女たちの両親はWaaが3歳のときに離婚、姉妹は祖父母のもとで育ちました。 父親は台北を拠点とする暴力団組織『竹聯幫』一派の元組長で、2008年1月には暴力的な借金取り立ての容疑で逮捕される騒ぎを起こしています。 当時はオーディション番組で人気者となった妹の如昀のほうが、このニュースの引き合いに出されることが多かったようです。
お母さんとは成人後に再会しますが、それから間もなく、2005年に死別しています。

Waaは17歳のときに同級生の代理で参加した歌唱コンテストで注目されレコード会社と契約。 CMソングなどを歌っていました。
その後どういういきさつで知り合ったのか詳細が出てきませんが、2003年にギタリストの奇哥(チーゴー)と男女ユニット・自然捲(Natural Q)を結成。 翌年1stアルバム『C'est La Vie』(風和日麗)をリリースします。
このアルバムは中華圏で高い評価を受け、第11屆新加坡(シンガポール)金曲獎では最優秀ユニットと最優秀新人の2部門にノミネート。 本家台湾の第16屆金曲獎(2005年)でも最優秀アルバム、最優秀バンド、最優秀編曲の3部門にノミネートされました。 また、中華音樂人交流協會による年度10大アルバムにも選ばれています。
2005年末にリリースした2ndアルバム『C'est La Vie Vol.2 大捲包小卷』も好評で、前作に続いて年度10大アルバムに選定。 第17屆金曲獎の最優秀バンド部門に2年連続ノミネートされました。

左から、1stアルバム『C'est La Vie』収録の『明信片』、2005年度10大シングルに選ばれた『風和日麗』、2ndアルバム『C'est La Vie Vol.2 大捲包小卷』から『牧羊人』。 楽曲の多くは奇哥が作詞作曲を担当、Waaが歌うというスタイル。 一部、奇哥がヴォーカルをとっている曲もあります。
  
http://youtu.be/Rh0eSlEgnKQ
http://youtu.be/45Bl7kk1yPg
http://youtu.be/rHw7ebYk0aQ

高い人気を維持していた自然捲ですが、2006年にアクシデントが発生します。
メインヴォーカル担当のWaaが喉を痛めてしまいユニットを離脱。 療養が必要とのことで一時歌手活動を中断せざるを得なくなってしまったのです。

再び歌い始めたのは翌2007年の後半になってから。 同年11月、Waaはインディーズレーベル・前衛花園(Avant Garden)から1stアルバム『La Dolce Vita 甜蜜生活』をリリースし、本格的にソロ活動を開始しました。
『La Dolce Vita 甜蜜生活』をプロデュースしたのは、日本の男女ユニット・mondialitoの笛岡俊哉氏です。 内容的には前衛花園が代理発行している海外アーティスト作品のカバーアルバムといった趣きで、復帰後、一層意識して使うようになったウィスパーヴォイスとも相まって、とても耳に優しい、ヨーロッパ的な雰囲気が漂う作品となっています。
完全オリジナルアルバムとは言えないかもしれませんが、12曲中7曲が彼女自身の作詞。 日常的でありながらタブー視される話題も盛り込むなど、Waa独特のこだわりがすでに現れています。

1stアルバム『La Dolce Vita 甜蜜生活』から、『一起去旅行』と『房間』。 右は『房間』のオリジナル、mondialitoの1stアルバム『note of dawn』(2002年)から、『rainy green grass』。 区別がつかない…^^;。
  
http://youtu.be/kuaoJeeufus
http://youtu.be/db9aRX_lbgI
http://youtu.be/phmpWT9ZV-A

2008年、Waaは女優業にも進出します。
まず、4つのストーリーからなるオムニバス映画『花吃了那女孩』(邦題 キャンディレイン)』に出演するのですが、ここで出会ったのが、その後の彼女の音楽スタイルに大きな影響を与えることになる人物、この映画の音楽を担当していた陳建騏(ジョージ・チェン)です。
7月、Waaは劇中で歌ったオリジナル曲『泡泡』や、陳建騏との共作『等等等』を収録したソロ1stシングル『泡泡』(前衛花園)をリリース。 さらに陳建騏が音楽監督を務めるミュージカル『向左走向右走』への出演も決定します。

『向左走向右走』は絵本作家・幾米(ジミー)の絵本を原作とするミュージカルです。 2003年に金城武と梁詠琪(ジジ・リョン)の主演で映画化もされました。 幾米原作ミュージカルは2003年に『地下鐵』(主演 陳綺貞)、2004年に『幸運兒』(主演 楊乃文・光良)の2作が上演され、いずれも陳建騏が音楽監督を務めています。
3作目となる『向左走向右走』(主演 陳柏霖・張鈞甯)には、青峯(チンフォン)ら蘇打綠(ソーダグリーン)のメンバーたちも参加。 楽曲提供やWaaとのデュエットで話題となりました。 Waaは2010年に許茹芸(バレン・スー)の主演で再演された際も引き続き出演をしています。

1stシングル『泡泡』から陳建騏との共作ナンバー『等等等』…ちょっとビックリしますヨ^^。
真ん中は映画『花吃了那女孩』のハイライト。 シングル『泡泡』のTrack 2『我在想唱一首歌』は歌ではなく、劇中の音声を切り出したものです。 右は『向左走向右走』のサントラから、青峰(チンフォン)とのデュエットで『愛在波希米亞』。
  
http://youtu.be/o8BY0aXhn18
http://youtu.be/km5VC1QT980
http://youtu.be/sWD8PTFg8ow

2ndアルバム『優雅的刺蝟』(亞神音樂)のリリースは前作『La Dolce Vita 甜蜜生活』から2年半後の2010年5月。 もちろん陳建騏のプロデュースです。
Waaは2009年のほとんどをライブ活動に充てました。 映画、ミュージカルで得た経験を自身の音楽スタイルにフィードバックさせる、そのために必要な時間だったのでしょう。 2ndには前衛花園所縁のドイツ人アーティスト・Maximilian Heckerや中国大陸の男女ユニット・卡奇社らが提供した楽曲も収録されていて、1stとの繋がりも感じさせてくれますが、陳建騏と作り上げた世界観はまったく別物となっています。 イージーリスニング的な浮揚感ではなく、水の中を漂いながら空を見上げているイメージです。 終盤、9曲目の『局部的人』から最後『一顆灰塵』に至る…深く沈み込んでいくような、だんだんと暗くなって、やがて別の光が現れてきそうなイメージ、鳥肌が立つほどです。

2008年からの2年間はWaaにとって膨大な情報と経験を得た、濃密すぎる時間でした。 言い換えれば素顔を出せない2年間だった…ということでもあります。
2010年12月、Waaは2年に一度台北で開催される巨大野外音楽イベント『Simple Life簡單生活節』に出演しました。 『魏如萱 簡單生活節』で検索すればそのときの映像がたくさん出てきますが、ホントに飾らない素敵なライブだったようです。
これでフッ…と素の自分に戻ったのでしょうか、翌2011年1月にリリースした2ndシングル『在那裡』は、ソロアーティスト・魏如萱が自分の原点を求めているような一枚になっています。
簡單生活節でも歌っていた『香格里拉』は929樂團の元メンバー・黃玠(ホァン・ジエ)提供の楽曲で、2006年末リリースの企画盤『2007 future maker』が初出です。 喉を痛める前に歌った、まさに原点のような曲を初めて自分名義の作品に収録しました。
また、自分探しの旅から戻った黃玠が2007年6月にリリースしたソロ1st EP『綠色的日子』(風和日麗)には、活動を再開したWaaとのデュエットナンバー『25歳』と『做朋友』が収められています。 これもWaaの隠れた名曲でしょう。

彼女の作風に劇的な色彩が増してきたのは、やはり陳建騏と出会い、ミュージカルの舞台に立って以降だと思います。 2011年11月にリリースした3rdアルバム『不允許哭泣的場合』ではその色が2ndからさらに深くなっているように感じました。
ミュージカル調の曲で幕が上がり序盤は明るい雰囲気が続きますが、中盤のアタマに場面転換を意識させるInterlude的なインストゥルメンタルが入ったあと一気に前衛的に。 終盤は前作とは構成を変えて、『晚安晚安』や『我們』、『飛鳥』、『吼友』などホッとする曲、ストレートに聴かせる曲で盛り上げ、最後は静かに幕を下ろしています。
陳建騏がトータルプロデュースした作品にはOPからEDに続くストーリーのような流れがあって、なぜこの曲がここに置かれたのだろう…と、つい考えてしまいます。

2nd『優雅的刺蝟』から『局部的人』、シングル『在那裡』から2011年版『香格里拉』、3rd『不允許哭泣的場合』から『晚安晚安』。
  
http://youtu.be/mwCqGpVvjXs
http://youtu.be/8ko1RHTye_Q
http://youtu.be/u0iHoUH6YAM

今年3月の晚安晚安演唱會は大成功でした。 第23屆金曲獎では最優秀国語女性シンガー部門にノミネートされました。 7月には幾米原作ミュージカル『地下鐵』でヒロインを演じ、10月、シングルですがCDもリリースしました(…晚安晚安演唱會のライブ盤も)。
Waaは今、最もドラマティックな活躍を見せているアーティストです。

* * * * * *

メモ1:
Waaは子供の頃から猫が苦手だったそうです。 でもgagaが恐怖を克服させてくれました。

http://youtu.be/gIgN6jRH7s0

メモ2:
意図したものか、はたまた偶然か…Waaが出演した映画『花吃了那女孩』とミュージカル『向左走向右走』は、ともに2008年9月12日に初日を迎えた。

メモ3:
『花吃了那女孩』は同性愛をテーマとした4話からなるオムニバス映画。 Waaが出演したのは第2話の『看不見攻擊的城市』。 当時彼女は25歳だったが、演じた役の設定は35歳くらいらしい。 でも違和感ないです^^;。
劇中のBGMには、Waa、何欣穗(ciacia)、黃小楨(ホァンシャオジェン)、張懸(ジャンシュエン)、my little airport、甜梅號(Sugar Plum Ferry)、草莓救星(We Save Strawberries)、Tizzy Bacといったツウ好みのアーティストの楽曲が多数使用されている。 サントラ盤はまだ入手可能。

メモ4:
mondialitoは、2002年に作曲&演奏担当の笛岡俊哉(Toshiya)と作詞&ヴォーカル担当の西村純子(Junko)が結成した二人組ユニット。 Junkoはフランス在住で、歌詞もほとんどがフランス語。 日本のみならずヨーロッパや、韓国、香港、台湾などアジア地域での評価も高く、『ぼくたちの失敗』(森田童子)のフランス語カバー曲『notre echec』や『moon river』は韓国LGグループ(現GS E&C)のCMにも使われた。 台湾では2006年から前衛花園が代理販売している。
10月7日、THE WALL公館でライブを行なったばかり。 今回が3度目の訪台。

メモ5:
前衛花園唱片(Avant Garden Records)は2001年にキノコ養殖業を営む『路先生』が個人で立ち上げた、海外のオルタナティブロックやボサノバ作品を中心に輸入・代理販売を行なっているインディーズレーベル。
当初は喫茶店や自宅などで販売していたが、その後誠品書店に専用コーナーが設けられ、クチコミで評判が広がっていった。 大物プロデューサー・林暐哲(ウィル・リン)や、陳珊妮(サンディー・チェン)、范曉萱(メイヴィス・ファン)、萬芳(ワンファン)、黃韻玲(ケイ・ホァン)ら有名アーティストもここの常連らしい。
Waaが前衛花園と契約したのは2007年。 この年、前衛花園は製作・販売を行なうインディーズレーベルとして正式に稼働。 Waaのソロ1stアルバム『La Dolce Vita 甜蜜生活』をリリースした。 Waaは前衛花園が初めて契約した台湾人アーティスト。

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